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2009年5月16日土曜日

『宙のまにまに』(6)

著者:柏原麻実
発行:講談社

 『宙のまにまに』第6巻。(物語上)2年目の七夕から2学期が始まるまでの夏が描かれています。7話のうち3話が夏合宿のドラマに割かれています。この3話が朔の心的成長を丹念に追いかけられていて、この成長が後の物語を牽引する伏線になっています。この夏合宿が大きなエポックになりそうです。

 夏合宿をきっかけに朔に自信が生まれ、大きく成長していきます。

 1つは「好きから始めていいのだ」と気づいたこと。
 合宿の前と後とで、セリフに大きな変化が見られます。

合宿前(第37話)
受験…進路…自分の進むみち…か…オレの中にあるものと言えば…本が好きな自分それだけでどこまでいけるだろう……

合宿後(第42話)
夏休みの終わり…小説を書き始めたそれが今自分なりに出来ることだと思ったから

 合宿前には、ただ思い悩むだけで「みち」を進むのを逡巡しています。行動を起こせないでいます。これが合宿終了後に一変。「自分なりに出来ること」をすることから始めようという意思が感じられます。その成長を朔自身が感じているようです。この後に続く言葉「この街で今ぼくは前に進んでいる」が象徴しています。
 蛇足ですが、変わったのはセリフだけではありません。合宿中の朔の口元を追うと、自身を持ってからは口角が上がっています。言葉だけを追っていると見逃してしまいそうですが、絵でも成長を表現しているのがわかります。

 2つ目は、朔が与えられる側から与える側に変わったこと。
 第42話「茜色のメッセージ」は、生徒会長こと琴塚が朔に背中を押され、小説を書くことを決意する話です。見方を変えれば、朔が初めて背中を押す役割を果たした話といえます。第42話以前、朔は背中を押される側でした。しかも、年上の女性ばかりに。ところが、この第42話でようやくレベルが1つ上がりました。

 合宿での朔の精神面の成長は1つの新しい可能性を示唆しているように思えます。『ラブひな』になりえるという可能性です。
 『ラブひな』は週刊少年マガジンに連載していた赤松健さんの漫画。東大合格を目指す浦島景太郎が女子寮で繰り広げるラブコメです。主人公・浦島景太郎ははじめ情けない男として描かれていました。ところが、物語が進むうちに成長し、頼れる存在になります。その主人公が物語から一旦退場し、代わりにヒロインが情けない存在として描かれ主人公になっていきます。
 『ラブひな』の主人公交代劇は、いわば、物語の「延命」措置でした。「主人公の成長物語」という命題があったとき、主人公が成長してしまえば物語は原則として幕を閉じます。恋愛物語とは多少異なる点(※)です。

(※) 「恋愛物語」は原則としてヒーロー・ヒロインがカップルになるのが当初の目的です。目的が果たされば、物語は幕を閉じるのが原則でしょう。成長物語において主人公の成長が果たされたとき、幕を閉じるのと同じです。しかし、恋愛物語の場合には、カップルに破局を思わせる危機を与えてるという試練を与えることができます。そうすることでドラマは盛り上がり、さらに想いの深さ(愛の深さ)を知ることになります。

 『宙のまにまに』は「学園物」の宿命として卒業が待ち受けています。物語の時の流れで2年目、ヒロインである美星の卒業は避けられません(留年でもしない限り)。ステレオタイプな考え方をすれば、ヒロインの卒業と同時に幕引きでしょう。けれども、やはりファンとしては少しでも長く連載が続いて欲しいというのが希望なわけで。僕は、この朔の成長が壮大な種まきに感じられるのです。期待をかけすぎでしょうか?

 今の話題と関係あるようで、関係ない話です。第37話「夏が来たということは」、後ろから数えて2ページ目に書かれた朔のモノローグが意味深なものに感じませんか?

けたたましいセミの声と土のにおいを含んだ空気…一緒に過ごす最後の夏がはじまろうとしていた――――――――…

 この合宿編、まだまだ見所があります。
 合宿初日、1人で鏡材を磨く朔のもとに杏がやってきます。その手には飲み物が2本。一方、合宿最終日には、星を1人見上げる美星のもとに朔がやってきます。その手にはやはり飲み物が2本。ちょっとした相似の関係のようです。
 その後の朔と美星が手をつないで空を見上げているシーン。よく見ると美星の服装が変わっています。星見のときの機能性重視の格好ではなく、「単品スカート」。同じコマに書かれたモノローグが朔のものであることから、きっと朔の心象風景なのでしょう。でも、この風景が伝えるものは何でしょう。想像すると、いろいろと頭を駆け巡ります。
 それにしても、合宿編3話とも笑が完全にオチ担当になっています。愛すべきいいキャラクターです。柏原さんの愛がこもっています。(他のキャラクターにも、もちろんそのキャラクターに相応しい愛が注がれていますよ。)

 「恋愛物語」としての『宙のまにまに』は他の人たちもたくさん感想を書くので、僕がわざわざ書くこともないのでしょうが、これだけは書き残しておきます。
 第40話での合宿3日目のこと。花火大会のさなか、2人っきりになる朔と杏。せっかくの2人っきりなのに思惑がすれ違っています。言葉を発しない2人。美星を探してキョロキョロする朔。それに気づいてしまう杏の表情。握手を申し出る杏。がんばれの想いのこもった握手。美星の居所を伝える杏の笑顔。「え!?」と驚く朔にニコッと微笑む杏。
 この後、朔の後ろ姿を杏はどんな表情で見送ったのでしょう。描かれていないからこそ、想像が掻き立てられます。
 ちなみに6巻の中に同じようなシチュエーションの女の子たちが描かれています。七夕まつりで告発不発に終わった後の姫。美星が心配していたことを野辺山高原で告げた後の小夜。朔を迎えに来たのに遠慮してその場を去ろうとする美星。隠された目元、うつむいた顔、後ろ姿、どれも想像の余地が残されています。女の子たちの憂いや切なさや戸惑いなど、一言で書けない想いが覗けるようです。

 『宙のまにまに』が浅くも深くも楽しめるのに気づいてきました。テキスト部分だけ読めば、筋を楽しむことができます。漫画を読むスピードが速い人たちは、このテキスト読みが中心ですよね。それに対し、絵の隅々まで、それこそ、絵で表現されていないところまで想像しながら読むと、さらに深みが増します。読み直すたびに新しい発見があります。
 エンターテイメントとしても作品としても両立しているすごさ。感服します。浅さも深さも兼ね備えているのって、同人誌やss(side story/short short)を始めとした同人誌向きだと思うのですが、どうなのでしょう。まだあまり数が出ていないようですが。これから出始めるのでしょうか。
 『宙のまにまに』が何巻まで続くかわかりません。2年目の秋・冬を描いて、8巻で終わる。カバー見返しの88星座紹介を見ると、その布石なのではと予感させます。一ファンとしては、少しでも長く読んでいたいというのが偽らざる願いです。作者の柏原さんには体に気をつけながらも、がんばって欲しいものです。


【はみ出し小ネタ】
 上の文章に書ききれなかった些細なネタです。おつまみ的にどうぞ。

第36話「七夕想い」
 姫が朔にいよいよ想いを告げるのかというシーン。その緊張を破って茂みから登場した江戸川。その登場時の姿が「グリコのマーク」。まさか偶然? いや、きっと、多分意図的に違いない!

○(参考)グリコのマーク
 歴代のグリコのマークが見られるサイトです。
 http://www.glico.co.jp/kinenkan/goal/goal1.htm

第41話「ナツイチ。」
 はるきのお姉さんたちが登場する第41話。長女から順に秋子、小冬、千夏、そして末っ子のはるき。さらに、お母さんの名前が節子。四季そろい踏みです。
 ページは変わり、朔が目覚めるシーン。太陽が低い位置にあって、外から「カナカナカナカナ」と鳴き声が聞こえます。ヒグラシの鳴き声ですね。「日暮」と漢字で当てることもあるとおり、夕方に鳴き声をよく聞きます。

※6巻とは関係ありませんが、『月刊星ナビ』で4月号~6月号と、3ヶ月連続で『宙のまにまに』アニメ化の特集記事を組んでいます。特に5月号は柏原さんへのインタビューです。アニメ専門誌より先行して濃い情報が書かれていて、お勧めです。


○柏原麻美さんのサイト「はらっぱ商店街」
 http://members.jcom.home.ne.jp/mmk1999/

○アニメ『宙のまにまに』公式サイト
 http://www.mmv.co.jp/special/soramani/

○『ラブひな』(11)
 上で紹介した赤松健さんの『ラブひな』。主人公が一旦退場する11巻です。

○雑誌『月刊星ナビ』2009年4月号~6月号
 『宙のまにまに』アニメ化の情報が掲載されています。

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2009年4月8日水曜日

『論理少女』(1・2)

著者:つじ要
発行:講談社

 講談社の『月刊少年シリウス』で連載している漫画。マンガ喫茶でその存在を偶然知り、趣味思考が僕のものと合致したので購入しました。
 僕の漫画の情報源はコンビニでの立ち読みとマンガ喫茶がほとんどです。『月刊少年シリウス』はコンビニにもマンガ喫茶にも置いてあることは少なく、今までノーチェックでした。

 中学校を舞台に「津隠問答」と呼ばれるパズルバトル(論理合戦)を出し合う漫画です。パズルの種類は古典パズルや論理パズルを中心に多岐に渡っています。劇中、数ページで収まる問題もあれば、解決までに2話以上かける長大なものもあります。

 この漫画には新しい可能性を感じるのです。

 まずは何と言っても「パズル」を題材とした「バトル」が目を引きます。
 今までも、「心理的な駆け引き」で展開する漫画や「論理的な推理」で相手の穴を突く主人公が活躍する漫画は存在していました。今までのこういった漫画は、特徴を語るのに「心理的な駆け引き」や「論理的な推理」が持ち出されていましたが、主役でありませんでした。例えば、何か事件に巻き込まれ、それを解決するのに「心理的な駆け引き」や「論理的な推理」が必要となる、といった類です。あくまでも事件に巻き込まれた主人公たちがどうその困難を乗り越え、その後にどうなるかにスポットが当てられていました。
 ニンテンドーDSのソフト『レイトン教授』シリーズも「ナゾ解き」がモチーフで、画期的な作品です。ストーリーの中に「ナゾ解き」を折り込み、プレーヤーがその「ナゾ解き」に参加する。今までなかったものです。けれども、ストーリーそのものは「ナゾ解き」がなくても充分に成立可能です。(成立可能と面白さは別です。「ナゾ解き」がなければこのソフトの魅力がかなり薄くなるのは語るまでもありません。)
 その一方、この『論理少女』は「パズル」が存在しないと意味を成しません。そのような舞台設定を作り上げることに成功しています。主役として「パズル」をモチーフにしているのは画期的でしょう。

 『論理少女』が切り開く可能性の2つ目。それはパズルの問題集が今までできなかったことが成しうる可能性を持っている点です。
 推理小説に推理漫画。単純に言ってしまえば犯人かトリックがあり、それを探すものです。その手がかりは劇中に示されます。劇中に書かれていないことは手がかりとなりません。劇中の描かれているもの、またはそこから論理あるいは連想で結び付けうるものだけが手がかりです。これはお約束です(※)。

(※)これが「お約束」だとすれば、きっと「約束破り」な作品も存在するのでしょうが、少なくとも僕はタイトルを挙げることはできません。でも、こういった「アンチ」はきっと存在することが予想できます。

 このお約束に対して、推理漫画は推理小説にできなかったことを切り開きました。推理小説の手がかりは、原則として文章で示されます。それに対し、推理漫画が提示する手がかりは文章(=セリフ)だけではありません。絵も大事な手がかりです。漫画という表現方法で、その手がかりを直接文章では書かずに、絵の中に忍び込ませることが可能になったのです。手法として確立したのは『金田一少年の事件簿』でしょうか。『名探偵コナン』『Q.E.D.証明終了』など他の推理漫画でも見られます。
 『論理少女』にも同じような傾向を感じます。
 ネタバレしないように例を挙げてみます。
 1巻「指定かくれんぼ」。解決のきっかけとなった最後の手がかりは、セリフでは書かれていないものの、不自然でなく出題前からずっとコマに描かれていました。あまりにも堂々と描かれているので、むしろ気がつきにくくなっています。
 2巻「1379集め」にも見られます。ルール説明をしている160ページの「1~100の数字がランダムに転がっています」と書かれた1コマ目。このコマに危機突破のカギとなったものがしっかりと描かれています。セリフではふれられていません。けれども「1~100の数字がランダムに転がっています」のセリフのあるこのコマにこの手がかりが描いてあるのポイントです。その上、この手がかり、この後は解決するまで意図的に隠されています。
 パズルというと問題やヒントが文章や図版で示されるものです。少なくとも「論理パズル」では、そこに書かれているもののみを手がかりとします。漫画という手段で描く『論理少女』は、手がかりを直接的にだけでなく間接的に描くことが可能になりました。大げさに表現してしまえば、パズルの大家であるサム・ロイドやデュドニーができなかった可能性を手にしているといえるのです。著者であるつじ要さんが意識しているかどうかわかりませんが、うまくすればパズルの世界に楔を打ちえるかもしれません。

 舞台は調っています。キャラクターもそろいました。一般の人にふりまく話題の準備はできています。今はまだ用意しているネタを1つ1つ料理しているところでしょう。正念場はそのネタが尽きてから始まるものと思っています。追い込まれてからもなお良質のネタが提示できるのであれば、「忘れられていく漫画」ではなく「記録として残る漫画」の1つとなるでしょう。

 非常に期待しています。『論理少女』の作品とともに筆者のつじ要さんにも注目していきたいです。


■ゲーム

○『レイトン教授』3部作
 この3部作で終了予定だったのが、次回作の制作が発表されました。ファンとしては「嬉しい」知らせです。

○『レイトン教授』関連グッズ
 『レイトン教授』のサウンドトラックが出ています


 左から攻略本に小説、コミックスまで


■推理漫画

○『金田一少年の事件簿』最新刊

○『名探偵コナン』最新刊

○『Q.E.D.証明終了』

こちらに右の『Q.E.D.証明終了 ザ・トリック・ファイル』の記録と、テレビドラマ『Q.E.D.証明終了』最終回を見て感じた記録を残しています。


■パズル本

○『巨匠の傑作 パズルベスト100』
 サム・ロイドとデュドニーの生い立ちや今にも残っているパズルの数々が気軽に味わえる1冊です。手に入りやすさもあってお勧めです。


○書き記すまでもなくどうでもいいことなのですが、意味段落・形式段落の始めに1字下げをすることにしました。ウエブの文章ではまだまだ揺れている段階ですが、読みやすさ優先で下げてしまいます。しばらくは段落は全部1字下げ、意味段落の前はさらに1行空けで書いていきます。
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『駅弁ひとり旅』(7)

著者:監修…櫻井寛、作画…はやせ淳
発行:双葉社

『漫画アクション』に連載されている鉄道漫画。主人公・中原大介が日本を1周するかたわら各地の駅弁を食べまくります。

この漫画を読んでいると無性に電車で遠くに行きたくなります。それで駅弁を買って、景色を見ながら舌鼓を打つ。……こんな旅にあこがれます。いつかゆっくりとそんな旅に出てみたいものです。

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2009年2月22日日曜日

『スケッチブック』(5)

著者:小箱とたん
発行:マックガーデン

コミックブレイド』に連載されている4コママンガ(たまに4コマ形式ではない漫画になることもあります)です。
美術部の個性的な部員たちが活躍する、いい意味で「ゆるい」漫画です。
イベントがあるわけでもなく、恋愛や喧嘩・争い事があるわけでもなく、なんてことのない日常を切り取られ、この「ゆるさ」が演出されています。

友達との何気ない会話、買い物の風景、ふと感じる季節感。
どれもなんてことのないことなのですが、こんなことの積み重ねが日常なんだと感じさせてくれます。

次に書くことは、僕が漫画から感じる予測です。

この「ゆるさ」を生み出す源は、作者である小箱とたんさんの日常を切り取る「観察眼のセンス」と学生時代の経験を忘れない「思い出への執念」の2点あるような気がします。

小箱とたんさんが持っているいろいろな要素(猫好き、倹約好き、植物・虫好き、お笑い好き、……)が、美術部員たちの各個性になっている気がします。小箱とたんさんの分身として、そして、その要素が濃縮されて、各キャラクターが生み出されている気がします。たくさんある要素が「観察眼のセンス」につながっているのだと思います。
言葉をいじくり倒し遊びこね回すセンスも好きです。ネタバレしたくないので書きませんが、「ナマケモノ」「三尾」という言葉を、よくぞこういじくれるなと感心します。
p.72の「さばだば」「さらば」の2本、キャラクターを活かしている点、言葉遊びのセンス、音があるはずのないのに頭の中に音楽が流れ込んでしまう点、どれをとっても大好きです。

高校生ならでは(特に文科系部活ならではの)ゆったりとした空気もよく出ていると描かれていて感心します。この空気は経験していないと出せない空気だと思います。連載7年目にしていまだに現役高校生ということはないでしょうから、この経験を執念で覚えているのかと思います。もしかしたら、美術部の先生なのかなとも少しは思いますが。

よつばと!』とはまったく異なる「ゆるさ」の漫画です。文科系部活のゆるい空気を感じたい人にはうってつけの漫画です。言葉をこね回すのが好きな人にもお勧めです。
マンガ喫茶ではあまり見かけません。書店で手にとってみるのがいいでしょう。


○アニメ版『スケッチブック』(スケッチブック ~full color's~)公式ページ
 http://www.sketch-full.net/

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2009年1月31日土曜日

『金魚屋古書店』(8)

著者:芳崎せいむ
発行:小学館

漫画好きの漫画好きによる漫画好きのための漫画です。
普通の漫画好きから、他に並ぶ者がないくらいの漫画好き(コミックスの帯では「まんがばか」なんて表現をしています)が登場します。「金魚屋古書店」と呼ばれる漫画のみを扱う古本屋を中心に、それぞれのキャラクターたちの生活空間で物語を展開します。物語の核となるのが「漫画」。漫画を捜す話だったり、漫画にヒントを得て物語が進行したり、扱われ方はまちまちです。

そんな漫画ですから、台詞やコマの中にも漫画がたくさん登場します。柱には漫画うんちくも書かれていて、物語に深みを与えます。

8巻(※)まで来ると、主人公以外のキャラクターも多く存在します。この8巻では、主人公をとりまくキャラクターが主役の話が多かった気がします。

個人的には主人公の斯波尚顕の活躍が好きなので、ちょっとものたりなさを感じました。でも、他のキャラクターもそれぞれに個性的なので充分楽しめました。

8巻の最終話が前後編の前編で終わっていて、後編が非常に気になります。やきもきしながら9巻を待ちたいと思います。



(※)本当は「8集」という書き方をしなければいけないそうです。その理由は次の書き込みにまとめます。

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2009年1月27日火曜日

ナレッジエンタ読本『中国がわからない!【サクサク現代史!アジア激闘編】』

著者:青木裕司、片山まさゆき
発行:メディアファクトリー

世界史を教えている予備校講師の青木さんと漫画家の片山さんの2人による本です。
片山さんが漫画を描き、青木さんがそれに解説を加える。そして2人の対談によってより深められる。
漫画で楽しく世界史の世界に潜り込め、解説と対談で知識と認識を深めることができます。

この本は『サクサク現代史!』シリーズ第2弾です。
日本のすぐ近くの中国・北朝鮮・韓国。この3国の近現代史がテーマです。

どことなく捕らえどころがない中国と北朝鮮。何を考えているのかよくわからない気味悪さがあります。
でも、その気味悪さは「無知」が引き起こしているのだと、スパッと言い切ります。まずは知るところから始めないと、真の友好関係なんて気付けないと断言します。

実に気持ちいい言い回しです。

世界史の解説本ですが、世界史のフィルターを通して今を伝えたい想いが伝わってきます。つくづく歴史は今を写し出す鏡なんだと思い知らされます。

参考書ではないので、この1冊で受験はバッチシなんていう訳にはいきません。けれども、中高生が本格的な世界史の勉強を始める導入としてバッチシです。また、大人がアジアの世界情勢を知るのにも充分耐えられます。
解説と対談で様々な問題提起がなされます。その問題提起をそのまま受け止めるのではなく、自分の頭で考えることがとても大事だと思います。
この本ではその材料が与えられます。

それにしても、一流の人同士が手を組む、いわゆるコラボの力が生み出す凄さ。ほれぼれするくらい素晴らしいと思います。『サクサク現代史!』シリーズを読んでいると、不思議と興奮してくるのです。

まだまだ日が浅い「ナレッジエンタ読本」ですが、この『サクサク現代史!』シリーズの質は断トツではないでしょうか?

『サクサク現代史!』シリーズはとにかくお勧めです! なかなか版を重ねないので勝手にドギマギしているのですが、個人的に猛プッシュしたい1冊です。
この2人には第3弾、第4弾、…とがんばってもらいたいものです。

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2009年1月22日木曜日

『社長DEジャンケン隊』(1〜2・完)

著者:現代洋子
発行:小学館

「ビッグコミックスピリッツ」で連載されていた『おごってジャンケン隊』が「ビッグコミックスペリオール」に舞台を移して、リニューアルした漫画です。
今度は各界の社長に話を聴き、そして最後はジャンケン。負けた人が全額を払います。

前『おごってジャンケン隊』から登場している担当編集者の八巻和弘さんが、今回もいい味を出しています。破天荒なキャラクターぶりが遺憾なく発揮されています。
現代洋子さんの描き方でそうさせるのでしょうね。

一回「生八巻」(こう書くと何かの料理みたいですね)を覗いてみたいですね。

現代洋子さんのサイトを見ると、2児のお母さんとしての活躍ぶりも伺えます。ブログの記事を思わず読みいってしまいました。

今はまだ一部の人のみぞ知る状況ですが、今後の活躍を期待したいですね。

現代洋子さんの公式サイト「現代洋子の基礎知識」
http://www005.upp.so-net.ne.jp/gendai/

『おごってジャンケン隊』『社長DEジャンケン隊』私設ファンサイト「ジャンケン隊ドットコム」
http://park7.wakwak.com/~jdc/

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『おごってジャンケン隊』(1〜5・完)

著者:現代洋子
発行:小学館

【画像なし】

毎回、著名人のお勧めの飲食店で食事をしながら話を聴くというインタビュー漫画です。ただ他の漫画と決定的に異なるのは、最後に参加者全員でジャンケンをし、負けた人が食事代をすべて払うという恐ろしいルールがあるところです。まさに身体(財布?)を張ったインタビューです。

もちろん筆者の現代さんが負けることもあれば、ゲストが負けることもあります。芸能人のマネージャーが負ける回もあります。ただ付き添いで参加した人が被害を受ける場合もあります。

領収書なんか切ってもらえません。なんでもその場でビリビリに破かれるとか。

何て言うんでしょう。箱庭を上から眺めているというか、檻の外から動物を眺めるというか。絶対に自分は安全だというポジションから騒動を遠巻きに眺めている感覚。
ジャンケンで負けた人に「気の毒だなあ」て思いつつも、すべてが他人事。他人事ごとなのがなんでこんなに楽しいのでしょう。

負けたときに現れる人柄。誇張も計算もあるのかもしれませんが、ありえないシチュエーションに追い込まれたときの人の姿は見物です。

これは著者の現代洋子さんの取材力・観察力・構成力・表現力によるところが大きいのでしょう。
毎回、ゲストが話す決めゼリフ。これを見せゴマにして、ゲストを魅力的に引き立てます。インタビュー漫画としてもよく出来ていると思います。

メインのゲストに対してだけでなく、同席している人達にも心を込めて描いているんでしょうね。そんな様子が伝わってきます。

ジャンケンに負けた人の惨めな姿を単純に描くのではなく、おいしいように描いてたんのかなと想像しています。

マンガ喫茶で見つけて読み切りました。本屋にはあまり並んでいないかもしれません。古本屋かマンガ喫茶でどうぞ。

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2008年12月27日土曜日

『数学ガール』(上)

著者:原作…結城浩、作画…日坂水柯
発行:メディアファクトリー

小説『数学ガール』をマンガ化した作品で、コミックフラッパーに連載されているようです。
上巻では、物語の冒頭から「半径0の円」の話までです。

小説版は数式が遠慮なく出てくるので、それがマンガになるとどうなるのか非常に興味がありました。思ったよりも違和感なく読めるのに驚きです。

小説がマンガとして再び表現されるとき、2つの不安を抱きます。

1つは小説がどこまで再現されるのか。
小説がマンガやアニメ化されるとき、その制約上、話を縮めることはよくあることです。ページの都合だったり、話数の都合だったり、表現方法の違いだったり、ひどいときは大人の都合だったり、理由は様々です。
今回の『数学ガール』では大きな違和感なく展開されてて、正直意外でした。

2つ目は小説では想像に任されていたのが、絵となって表現されてしまうことです。
登場人物の顔が最たるものでしょう。小説を読んでいるときは自分だけの「僕」「ミルカさん」「テトラちゃん」がいるわけですから。
実ははじめ違和感がありました。けれども読み終わる頃には違和感がなくなっていました。作画の力なのか、はたまた僕の適応能力の問題なのか?
「僕」と「ミルカさん」の肉筆って、こんなだったのですね。なんとなく納得してしまいました。

買おうかどうか迷っていたのですが、思い切って購入して正解でした。
下巻も楽しみです。数学的な伏線を回収し切れるのでしょうか。ちょっぴり心配です。

そういえば、『数学セミナー』2009年1月号に、原作者結城さんのインタビューが掲載されていました。これも面白かったです。

ところで、こういう「数学+青春」という今まで考えられなかったようなジャンルがマンガになり、天文部・書道部・カルタ部がマンガになり、まだまだマンガの表現の可能性は尽きてないのを感じます。
ルポや日常系のマンガの勢いも感じます。『カラスヤサトシ』しかり『ぼく、オタリーマン』しかり『ツレがうつになりまして。』しかり『ダーリンは外国人』しかり……。今日立ち読みした『理系クン』も面白かったです。
まだメジャーになっていないでくすぶっている才能ある人たちが、来年あたりまだまだ出てくるんでしょうね。応援したいと思います。

天文部
書道部
カルタ部

2009年1月19日追記
『数学ガール』原作者である結城浩さんのブログに、この感想が引用されていました。なんてマメな方なんでしょう。驚きと感激で何と言っていいやらわかりません。ありがとうございます!
 結城浩のはてな日記
 『数学ガール』言及リンク集(67)の上から5つ目が僕のです。
 http://d.hatena.ne.jp/hyuki/20090118