著者:つじ要
発行:講談社
講談社の『月刊少年シリウス』で連載している漫画。マンガ喫茶でその存在を偶然知り、趣味思考が僕のものと合致したので購入しました。
僕の漫画の情報源はコンビニでの立ち読みとマンガ喫茶がほとんどです。『月刊少年シリウス』はコンビニにもマンガ喫茶にも置いてあることは少なく、今までノーチェックでした。
中学校を舞台に「津隠問答」と呼ばれるパズルバトル(論理合戦)を出し合う漫画です。パズルの種類は古典パズルや論理パズルを中心に多岐に渡っています。劇中、数ページで収まる問題もあれば、解決までに2話以上かける長大なものもあります。
この漫画には新しい可能性を感じるのです。
まずは何と言っても「パズル」を題材とした「バトル」が目を引きます。
今までも、「心理的な駆け引き」で展開する漫画や「論理的な推理」で相手の穴を突く主人公が活躍する漫画は存在していました。今までのこういった漫画は、特徴を語るのに「心理的な駆け引き」や「論理的な推理」が持ち出されていましたが、主役でありませんでした。例えば、何か事件に巻き込まれ、それを解決するのに「心理的な駆け引き」や「論理的な推理」が必要となる、といった類です。あくまでも事件に巻き込まれた主人公たちがどうその困難を乗り越え、その後にどうなるかにスポットが当てられていました。
ニンテンドーDSのソフト『レイトン教授』シリーズも「ナゾ解き」がモチーフで、画期的な作品です。ストーリーの中に「ナゾ解き」を折り込み、プレーヤーがその「ナゾ解き」に参加する。今までなかったものです。けれども、ストーリーそのものは「ナゾ解き」がなくても充分に成立可能です。(成立可能と面白さは別です。「ナゾ解き」がなければこのソフトの魅力がかなり薄くなるのは語るまでもありません。)
その一方、この『論理少女』は「パズル」が存在しないと意味を成しません。そのような舞台設定を作り上げることに成功しています。主役として「パズル」をモチーフにしているのは画期的でしょう。
『論理少女』が切り開く可能性の2つ目。それはパズルの問題集が今までできなかったことが成しうる可能性を持っている点です。
推理小説に推理漫画。単純に言ってしまえば犯人かトリックがあり、それを探すものです。その手がかりは劇中に示されます。劇中に書かれていないことは手がかりとなりません。劇中の描かれているもの、またはそこから論理あるいは連想で結び付けうるものだけが手がかりです。これはお約束です(※)。
(※)これが「お約束」だとすれば、きっと「約束破り」な作品も存在するのでしょうが、少なくとも僕はタイトルを挙げることはできません。でも、こういった「アンチ」はきっと存在することが予想できます。
このお約束に対して、推理漫画は推理小説にできなかったことを切り開きました。推理小説の手がかりは、原則として文章で示されます。それに対し、推理漫画が提示する手がかりは文章(=セリフ)だけではありません。絵も大事な手がかりです。漫画という表現方法で、その手がかりを直接文章では書かずに、絵の中に忍び込ませることが可能になったのです。手法として確立したのは『金田一少年の事件簿』でしょうか。『名探偵コナン』『Q.E.D.証明終了』など他の推理漫画でも見られます。
『論理少女』にも同じような傾向を感じます。
ネタバレしないように例を挙げてみます。
1巻「指定かくれんぼ」。解決のきっかけとなった最後の手がかりは、セリフでは書かれていないものの、不自然でなく出題前からずっとコマに描かれていました。あまりにも堂々と描かれているので、むしろ気がつきにくくなっています。
2巻「1379集め」にも見られます。ルール説明をしている160ページの「1~100の数字がランダムに転がっています」と書かれた1コマ目。このコマに危機突破のカギとなったものがしっかりと描かれています。セリフではふれられていません。けれども「1~100の数字がランダムに転がっています」のセリフのあるこのコマにこの手がかりが描いてあるのポイントです。その上、この手がかり、この後は解決するまで意図的に隠されています。
パズルというと問題やヒントが文章や図版で示されるものです。少なくとも「論理パズル」では、そこに書かれているもののみを手がかりとします。漫画という手段で描く『論理少女』は、手がかりを直接的にだけでなく間接的に描くことが可能になりました。大げさに表現してしまえば、パズルの大家であるサム・ロイドやデュドニーができなかった可能性を手にしているといえるのです。著者であるつじ要さんが意識しているかどうかわかりませんが、うまくすればパズルの世界に楔を打ちえるかもしれません。
舞台は調っています。キャラクターもそろいました。一般の人にふりまく話題の準備はできています。今はまだ用意しているネタを1つ1つ料理しているところでしょう。正念場はそのネタが尽きてから始まるものと思っています。追い込まれてからもなお良質のネタが提示できるのであれば、「忘れられていく漫画」ではなく「記録として残る漫画」の1つとなるでしょう。
非常に期待しています。『論理少女』の作品とともに筆者のつじ要さんにも注目していきたいです。
■ゲーム
○『レイトン教授』3部作
この3部作で終了予定だったのが、次回作の制作が発表されました。ファンとしては「嬉しい」知らせです。
○『レイトン教授』関連グッズ
『レイトン教授』のサウンドトラックが出ています
左から攻略本に小説、コミックスまで
■推理漫画
○『金田一少年の事件簿』最新刊
○『名探偵コナン』最新刊
○『Q.E.D.証明終了』
こちらに右の『Q.E.D.証明終了 ザ・トリック・ファイル』の記録と、テレビドラマ『Q.E.D.証明終了』最終回を見て感じた記録を残しています。
■パズル本
○『巨匠の傑作 パズルベスト100』
サム・ロイドとデュドニーの生い立ちや今にも残っているパズルの数々が気軽に味わえる1冊です。手に入りやすさもあってお勧めです。
○書き記すまでもなくどうでもいいことなのですが、意味段落・形式段落の始めに1字下げをすることにしました。ウエブの文章ではまだまだ揺れている段階ですが、読みやすさ優先で下げてしまいます。しばらくは段落は全部1字下げ、意味段落の前はさらに1行空けで書いていきます。