著者:野村進
発行:講談社
ノンフィクション作家・野村進さんによるノンフィクションを書くための手引きです。テーマ設定から、情報収集の方法、インタビュー、実際の執筆まで取り上げられていて、その範囲は準備から完成に至るすべてのプロセスが書き尽くされています。それこそ「当たり前」レベルの常識といわれる範疇のことも丁寧に書いてあります。
ノンフィクションライターを目指さなくとも、文章で生計を立てていこうと考えているならば、一度は目を通しておきたい本です。
そんな本書の中でいくつも目を引いた記述があったのですが、特に目を引いたのは次の箇所です。引用します。
たとえ、読者に強く訴えたいテーマが書き手にあったとしても、テーマをテーマとしてそのまま提出すると、まず間違いなく失敗作になる。そうではなくて、登場人物たちをいかにいきいきと描くかに腐心したほうが、結果としてテーマも自然に浮かび上がり、読者の胸に届けられるのである。
(p.147より引用)
登場人物をいきいきと描くことへの注意は、図らずもフィクション作家も同様の内容をを述べていました。その作家とは、小説家であり脚本家でありマンガ原作者でもあるあかほりさとるさんです。自身の著書『オタク成金』で、エンターテイメント小説にとって一番重要なのはキャラクターで、そのキャラクターを活かす魅力的なシーンを描かねばならない。魅力的なシーンがキャラクターを魅力的にする、と述べています。
いきいきと登場人物を描くこと。ノンフィクションとフィクションとに共通して、魅力ある登場人物が読者を惹き付け、テーマを明確にするといいます。この意外な共通点に驚きを覚えました。
『調べる技術・書く技術』の中には、著者・野村進さんの手による短編ノンフィクションが3本収められています。3本のどれにおいても、確かに登場人物をいきいきと描いています。喜び・悲しみ・戸惑いといった感情、置かれた状況や背景。そんなことがひしひしと伝わってきます。リアル感を醸し出し、テーマが鮮明になっています。
「手引き」部分も相当に素晴らしいのですが、実例としてあげられた短編ノンフィクションに感銘を受けました。本格的なノンフィクションを読んだ経験がなく、今までノンフィクションの素晴らしさを知りませんでした。本書を通じて、その素晴らしさを知ることができました。この点だけ取り上げても、僕にとっては収穫でした。
作家を目指す人も、そうでない人も、読む人それぞれの収穫がある本です。お勧めです。
○過去の投稿より『オタク成金』
上の書き込みで話題にした本です。エンタメ作家を目指すならば、ぜひ読むべき1冊です。
http://bookdiary-k.blogspot.com/2009_05_01_archive.html#4707665468373940619
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