著者:内山融
発行:中央公論新社
小泉元首相の執り行った政治を、内政と外交との面から論じた本です。
筆者である内山さんは小泉元首相を次のような特徴を持っていたと評しています。
特徴の1つ目は、理性よりも情念で人々に訴えていた点です。これを「パトスの首相」と呼んでいます。キャッチフレーズとしてメディアに乗せられる「ワンフレーズ」。善悪の対立構図による「劇場化」。小泉元首相が活用したこれらの手法が、どれも人々に情念(=パトス)で訴えるものであり、わかりやすさと共に広まったのでした。
2つ目の特徴は、官僚主導や事前協議などを廃しての「トップダウン」の政策決定です。
小泉元首相は部下を持っていませんでした。いわゆる「派閥」を持たない政治家です。
派閥があると様々なしがらみが生まれます。派閥同士で意見のすり合わせ。そこから派生する貸し借り。派閥の中での年功序列の昇進システム。時にはメリットもあるのでしょうが、同時にしがらみでもあります。
また、派閥を持たない小泉元首相には、利益集団のしがらみからも解放されていました。各団体に慮る必要がなかったのです。
だからこそ、小泉元首相は「トップダウン」の政治を行うことができました。また、派閥や政治集団ではなく一般の人々に伝わりやすい「ワンフレーズ」を好むことにつながります。
この『小泉首相』を読んで、曖昧だった部分がかなり氷解しました。今、ここでは小泉元首相の「正」の特徴だけを書き記しましたが、本書には「負」の特徴も述べられています。功績も罪過も同列に描かれています。
政局はドラマです。人の思惑が渦巻く世界だからこそ、単純ではない物語があります。そんな物語を覗くことができました。満足です。お勧めの1冊です。
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