著者:ジョン・ケープルズ
監訳:神田昌典
訳:齋藤慎子、依田卓巳
発行:ダイヤモンド社
反応をより多くし売り上げ向上につなげる広告を書くためのノウハウがまとめられた本です。いわゆるビジネス書・実用書にあたります。
ここでいう広告とは、チラシ、新聞・雑誌の広告、DMといった紙ベースの広告です。
著者であるジョン・ケープルズが重視するのは、とにかく結果。反応や売り上げの成果です。「おそらく」「なんとなく」といった根拠のない判断を排除します。繰り返し繰り返し実戦テストを行い、評判の芳しくなかった宣伝をふるい落とし、生き残った宣伝を集め、エッセンスを抽出し、磨き上げた手法を大事にします。
数年に渡ってケープルズの集めた手法が、惜しげもなくこの本で公開されています。
「効果的な見出し3パターン」「見出し成功例10本」「成功した見出し4つの秘訣」「35の見出しの型」「お薦めのコピー13タイプ」「コピーの売り込み効果を高める20の方法」「こうすればもっと問い合わせが増える32の方法」――ここに掲げたすべてが掲載されています。どれも複数回のテストに耐えた手法ばかりです。
こういった手法解説の合間合間に具体例が数多く掲載されています。成功例だけでなく失敗例もたっぷりです。読者である僕らはその具体例を確認しながら1つ1つ手法を身につけることができます。
こういった手法を身につけることで、僕らは自信と確信を得ることができます。少なくとも、地雷の存在を確認しながら進むことができます。地雷の存在を知って進むのと、知らずに進むのでは大きな違いです。絶対的に成功率が高まります。
ケープルズが書き記しているのは広告そのものだけではありません。多くの会社に生息すると思われる「私の経験によると~」なんかと口にしながら、おそらく&なんとなくで判断する上司に対抗する手段まで書いているのです。実にユニークです。現場で活躍し続けたケープルズだからこそ書けた芸当です。
この本で気に入った点は応用範囲の広さです。懐の広さと表現してもいいかもしれません。
特定の業界であるとか、特定の媒体とか、そんな限定がありません。しかも、応用範囲は紙ベースの広告にとどまりません。
「目を引く」「興味を持ってもらう」ことを目的とするのであれば、本のタイトルや帯、商品紹介のポップ、記事のタイトルにも活かせます。ウエブやメールでリンクをクリックしてもらう目的でも、このノウハウは生きてきます。ツイッターでリンク先に誘導するのにも応用できそうです。テレビやラジオのCMは言うには及ばず、さらには営業マンのトークにも有効だと思うのです。
つまり、この『ザ・コピー・ライティング』がカバーするのは、読者に次の行動を促すものすべて、だといえます。ノウハウを寄せ集めただけの巷にあふれるビジネス書とは比べものになりません。
しかし、残念ながら不満がないでもありません。
なんといっても重複が多い! 念を入れるとか復習のためにとか、そういった読者のためではありません。版を重ねて書き足していくうちにといった感じの重複です。同じことを同じような言葉で繰り返すのには辟易します。
章ごとにバラバラな印象も受けました。導入の文章から始まる章、まとめで締めくくる章、そのどちらも存在しない章。見事にバラバラです。
訳語の不統一感も気になりました。複数人で翻訳している以上仕方がないのでしょうが、後半を担当している人の「横文字好き」ぶりはいかがなものかと。自然な日本語が思いつかなかったから、横文字のまま逃げた感じが行間・文字間からにじみ出ています。
翻訳書にありがちな読みにくさは拭えません。それでもこの『ザ・コピー・ライティング』は読むに値する良書です。日本人が書いた類書もおそらく存在するのでしょうが、少なくともこの本は読んで損はしません。
目を引くための手法はどんな職業であれ必要とするスキルです。そんなスキルを学びたい多くの人にオススメです。
最後にどうしてもツッコミを入れたいことを1つ。
サブタイトルの「心の琴線にふれる言葉の法則」。このサブタイトルそのものが、失敗例をきれいになぞったものになっているという大失態。
どんな失敗例かって?
それは読んでのお・た・の・し・み、ってことで!
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