2009年3月31日火曜日

『星ナビ』2009年4月号

発行:アストロアーツ

101号を迎えたという天文専門雑誌『星ナビ』。初心に立ち返るという名目で「わかってスッキリ! 天文の基礎」と題して天文に関する基本事項を解説するコーナーが掲載されていました。掲載されている疑問は7つ。その7つとは次のものです。

○「なぜ北極星はいつも同じ場所で輝いているの?」
○「なぜ季節によって見える星座が変わるの?」
○「なぜ星座は88個なの?」
○「なぜ冬の満月は、夏と比べて高く昇るの?」
○「なぜ金星は西の空で東方最大離角なの?」
○「なぜ、流星群は同じ時期に見られるの?」
○「なぜ星はそれぞれ色と明るさが違うの?」

基本的な疑問ではあるけども本格的に答えています。文章だけでなく図表も掲載されているので、視覚からも理解が進みます。

前々からこの雑誌の存在は知っていたのですが、買って読んだの初めてです。今までは本屋の立ち読みでパラパラ見るだけだったので、新鮮な体験でした。これからもちょこちょこチェックしようと想います。

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岩波新書『カラー版 すばる望遠鏡の宇宙 ―ハワイからの挑戦』

著者:文章…海部宣男、写真…宮下曉彦
発行:岩波書店

ハワイ島・マウナケアにある天体望遠鏡「すばる望遠鏡」。日本が誇る世界最大クラスの望遠鏡です。口径8.2m。数字だけ見てもピンときませんが、相当な大きさです。
このすばる望遠鏡が映し出す宇宙の姿を多数のカラー写真とともに紹介してくれるのが、この本です。それに加え、すばる望遠鏡が建設されるまで苦労も、すばる望遠鏡が初めて星をとらえるファーストライトの日のドラマも記されています。

何といっても写真にほれぼれしてしまいます。すばる望遠鏡が映し出す宇宙の姿。夜空を肉眼で見る星の姿ともプラネタリウムで見る星空とも、また望遠鏡などの道具を使って見る宇宙の姿とも違います。CGで再現した映像とも違います。「宇宙観」が変わりかねない姿がそこにはあります。これを見ながら思いを巡らし、解説を読んでまた納得する。贅沢な時間です。
また、すばる望遠鏡を巡るドラマを盛り上げる写真の存在もあります。すばる望遠鏡ができるまでの記録が、記憶だけでなく写真としても残っているのがまたいいのです。建築途中の記録写真も迫力があります。

このすばる望遠鏡がとらえる宇宙ですらも、宇宙のほんの一部。まだまだわからないことだらけというのだから、マンガ『宙のまにまに』のヒロイン美星が長生きしたいというのもうなずけます。

実に楽しめました。いい本でした。

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『理系思考 分からないから面白い』

著者:元村有希子
発行:毎日新聞社

著者の元村さんが毎日新聞のコラム「発信箱」に書きためたものを再構成したのがこの本です。

この本の精神はタイトルに込められています。「分からない」を恥と思うのではなく、「分からない」からこそ好奇心が生まれ、その好奇心に従って調べたり考えたりすることが面白い。そんなメッセージが伝わってきます。

この点は実に共感できるものでした。
良くも悪くもテストに慣れてしまい○か×か(正解か不正解か)で判定してしまいがちです。だから、正解を手軽に求めるノウハウに飛びついたり、答えをすぐに知りたがります。同じ問題を長い時間考えるのも拒否しがちです。
テストのように正解か不正解かでとらえてしまうと、物事を二面性でしかとらえられなくなります。ある現象がダメだったとき、その真逆に走ってしまう。両極端にしか走れない傾向を感じます。「第三の道」だってあるはずなのにと思うことがしばしばです。
科学者の「分からない」姿を書き出すこの本には、正解か不正解かでしかとらえない世の傾向に楔を打つ意味で価値があります。

全体としては意義の大きい本だとは思うのですが、気になる点も多々ありました。 まず、「説教くささ」がどうしても気になります。問題点を挙げて警鐘を鳴らすのも新聞の大きな役割です。気づいていなかった視点を思い知らされることもあります。ただ問題点を挙げるだけでいいのか、と思わざるをえません。前向きな解決策を挙げてほしいのが僕の願いです。
あと主張があるのはかまわないのですが、その主張に飛躍があると「おいおい」と思うのです。「ニセ科学」と呼ばれるものを否定するのは自由ですけど、「再現性がない」ものは「ニセ科学」だというのには乱暴がすぎる気がします。極端に書けば、宇宙科学や地球科学なんか再現しようがないわけです。観察と考察の繰り返しによって構築してきた学問です。「再現性がないものは科学的ではない」とどこかで聞きかじったものをそのまま書いている姿勢を露呈しているのが残念でたまりません。

充分な文字数を与えられていないのは理解できます。けれども、2週にわたってコラムを書くとか、内容の多いものを書きたいときはそのようなページを割いてもらうとか解決策はいくらでもあるように思えます。
それに、こんなに大上段に構えないでいいのにと思います。自分の体験から発想を膨らまして書いてあるコラムの方が、正直読みがいのある魅力的な文章になっています。

メディアとして新聞を応援しています。新聞には新聞の役割があるからです。一部の残念な意見でインターネットから圧されていますが、そんなのを払拭する力を持ってほしいです。
こんなことを漠然と考えてしまいました。


■自分のサイトから関連項目
○「否定とともに解決策を」
 「否定」するだけの風潮に嫌気がさして書き散らした文章です。
 http://tblb.blog.shinobi.jp/Entry/19/

○「マスコミを支持しますか?」
 新聞とかテレビとかのマスコミについてあれこれ書き散らした文章です。
 http://tblb.blog.shinobi.jp/Entry/38/

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『カーツの文書読本』

著者:佐藤克之
発行:評伝社

【画像なし】

「文章は自由だ!」と思い知らされる1冊です。

きっかけは『調べる!、伝える!、魅せる! 新世代ルポルタージュ指南』(武田徹・著)です。この本で『カーツの文書読本』が紹介されており、興味を持って図書館にリクエストしたのでした。

表紙から度肝を抜かれます。金色の地に「佐藤克之著/カーツの文書読本/評伝社版」とでっかく書かれています。しかも「読」の字や「伝」の字が旧字体。金色のゴージャスな感じではなく糸かがりの表紙だったりしたら、明治時代発行かと勘違いしてしまいそうです。表紙から先制パンチが飛んできたようです。

内容も破天荒で個性的です。その書き方は一般的な作文・小論文の書き方指導とは大きく外れています。けれども、一見ムチャクチャに思える中にも人をグイグイ引きつける魅力があります。

序章の冒頭から繰り出すのはこの一言。

いいな、読んでいるアナタたちも、この本は『文書読本』じゃなく『ぶんひょ本ちゃん』だと思って読んでほしい。それがまず“ぶんひょ”がうまくなる第一歩である。

……「肩に力を入れるのではなく、もっと気楽に文書を書けばいいのだ」ということを伝えているのですが、それを伝えるのにこう表現してきます。普通の基準では評価されないのでしょうが、個性を発揮しながらも趣旨をうまく伝えている文章です。

新聞や雑誌の投稿を狙う第七章では、「丁寧」かつ「ドラマッチク」に盛り上げる言葉を取り上げています。その言葉とは「…たのです」。「…でした。」で終えるのとは違う余韻が「…たのです。」には漂います。
続けて取り上げているのが「…こともあってか」。「…だったので」と原因・結果をつなぐのと違い、「…こともあってか」と書くと因果関係をオブラートに包むような不思議な雰囲気が出てきます。

次のものは『カーツの文書読本』を紹介していた『調べる!、伝える!、魅せる! 新世代ルポルタージュ指南』にも書かれていたものです。自分の耳に聞こえてきたものを聞こえたままに表現する文体を作り上げ、「耳聞体」(じぶんたい)と読んでいます。 強烈なのが『君が代』の「耳聞体」。引用します。

きぃぃぃみぃぃがぁぁあぁよぉぉおおぉわぁぁ ちぃぃぃよぉぉにぃぃぃいぃぃいぃぃぃやぁぁぁぁちぃぃよぉぉほに さぁぁざぁぁぁぁれえええええ♪

……いや、もう、ただただ圧倒されます。「文語体」に対する「口語体」とも違います。聞こえたものを聞こえたままに表現しているわけで、こうしてみると「口語体」は真の意味の「口語体」ではないと思い知ります。「話し言葉」と「書き言葉」の間にはギャップが存在していて、そのギャップを著者の佐藤克之さんはこの「耳聞体」でグシャッと破壊しています。
「耳聞体」のコツとして「ぁぃぅぇぉっゃゅょ」といった小文字の多用を勧めています。
カタカナの使用も同時に勧めています。「そうなのか」と「そうなのかッ」の違いを比べたり、「わたし」「私」「ワタシ」の字面から受けるニュアンスを比べて、カタカナの効果を訴えています。
また、記号の使用も勧めています。先ほどの「そうなのかッ」を引いて、「そうなのかッ!!」「そうなのかッ!?」「そうなのかッ?」と並べてみせ、文字だけでは伝えられない効果を引き出しています。

ここで抜き出したことは、佐藤克之さんの書いていることでも真面目に主張している部分からです。全体を通してしまうと悪く書けばハチャメチャ、よく書けば自由奔放です。でもどこか説得力があります。これは、1つの雑誌の中にコラムやエッセイがたくさん掲載されていて、その中で目立つためにつかみとった知恵だからでしょう。枠にとらわれないからこそ、必然的に目立つことができているのでしょう。

この本が書かれたのは1990年。もう20年近く前です。1人1人が「ブログ」という文章表現の手段を手軽に手に入れられるようになった今だからこそ、佐藤克之さんの書く自由な文章の書き方が生きてくるのではと思うのです。
……とはいっても、僕がすぐにマネのできる代物ではないです。僕が扱うにはまだまだ力不足です。精進します。

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『ドット絵職人』

著者:Suguru.T(土屋卓)
発行:エムディエヌコーポーレーション

ちょっと懐古主義というかレトロ主義というか、最近「ドット絵」に興味が出て探し出したのがこの本。図書館で見つけて借りてきました。

個人的には、本屋で今手に入る本よりも馬が合いました。
理由の1つは途中経過図を細かく掲載していることです。いきなり完成図だけを見せるのではなく、完成までの課程を見ていくことで、自分がドット絵を作るときのイメージが湧いてきます。
理由の2つ目は偏っていないこと。どうしてもキャラクターもの、特に美少女ものが需要としては高いのかもしれません。けれども、この本はそんな傾向になんか目もくれず、様々絵を載せています。動物の絵や乗り物の絵、RPG風の背景やビル街なんかも収録されています。
理由の3つ目に挙げられるのは、1つの作品を改造していくつもの作品を作っていること。色違いだけですまさず、うまく改造することで作品が量産できる様子を描いています。これはドット絵制作では大事なことだろうと思うのです。

この本、僕は図書館で見つけたのですが、手元に置いておきたいですね。2003年発行なので、本屋で見つけるのは難しいのかもしれません。ネットや古本屋で探してみようと思います。

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2009年3月16日月曜日

『グラフで9割だまされる 情報リテラシーを鍛える84のプレゼン』

著者:ニコラス・ストレンジ
訳者:酒井泰介
発行:ランダムハウス講談社

データの扱い方1つでグラフの印象をガラリと変えることができることを、たくさんの事例と共に紹介しています。「グラフでだまされない知識」が身に付きます。裏を返せば、「グラフで悪用するための知識」が身に付くともいえます。

パソコンが1人1台という時代になり、エクセルやパワーポイントが手軽に扱えるソフトになりました。中学生がワード・エクセル・パワーポイントを学校で教わるというのだから、恐ろしい時代です。

そんな時代だからこそ、意識するかしないかはともかく、事実をねじ曲げたグラフが世にあふれています。
翻訳書という性格上、この本では海外の事例(著者の本国・イギリス)ばかりです。だからといって、遠い国の話というわけではなく、どこにでもありそうな事例も多く掲載されていて、初めて知る人には驚きに満ちあふれているかと思います。
類書に『データはウソをつく―科学的な社会調査の方法』(谷岡一郎・著)なんて本もお勧めです。この本でも充分衝撃を受けられます。

棒グラフ・円グラフ・……、名前は知っています。グラフの書き方、見方は学びます。けれども、「グラフにだまされない方法」は決して学びません。「グラフの読み方」ももはや「リテラシー」なのだなと実感させられました。

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『初体験JavaScript』

著者:丸の内とら
発行:技術評論社

【画像・リンクなし】

ブログパーツを作ってみたくて、JavaScriptの勉強を始めようと決意しました。たまたま行った古本屋にあったのがこの本。2001年発行といささか古いのですが、そのタイトル通り初心者向けに丁寧に解説がされています。

まだパソコンを持っていなかった中学生時代、Basicにあこがれて解説書を読みあさっていました。パソコンを持っていなかった若で、実際に試すことができない! そこで実際にプログラムを組まなくても頭の中で想像する癖ができてしまいました。

メリットは、プログラムを追いかけながら実際に動きを読む訓練が早いうちからできたことです。簡単なプログラムなら頭の中で追えます。
デメリットは、順序立てて書かれていない解説書が読めないこと。「まずは実際に動かしてみよう!」みたいなノリの解説書は、頭で追うのが困難なことが多く、だいたい挫折してしまいます。

その点、この本は支障なく読み切れました。充分概要がつかめ、次の課題も見つかり、満足です。

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角川oneテーマ21『まだまだ磨ける国語力 ―言葉の点検ワークブック』

著者:樺島忠夫
発行:角川書店

クイズ形式で語彙知識をチェックする本です。問題と3択からなる選択肢、そして解答と解説から構成されています。

一時、「日本語ブーム」と呼ぶべき現象が本やテレビで起きていました。きっかけとなる本か出来事があったような気がするのですが、何だったでしょうか。『問題な日本語』だったような気もするし、他の本だったのか。それにしても少なくともテレビでは「日本語ブーム」は下火になりました。

この本の初版が2003年。未確認ですが「日本語ブーム」より前に出ているかと思います。その意味では先見の明がある1冊かもしれません。

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講談社現代新書『なぜ日本人は学ばなくなったのか』

著者:齋藤孝
発行:講談社

タイトルが内容のすべてを表しています。まさに、齋藤孝さんが若い人たちに向けて書いたメッセージです。

学びに対して、教養に対して、あこがれを抱くこと。この本での言葉を借りれば『「リスペクト」という心の習慣』を身につけることの重要性を、手を変え品を変え幾度も訴えています。

同じような危機意識を持ち、同じような警鐘を鳴らしている方がたくさんいらっしゃいます。
けれども、齋藤孝さんのようにストレートに危機感を文章にし、その思いをストレートに表現している本を他に知りません。

思うに、「教育」とは「国の財産」です。目に見えないけれども、りっぱな「資源」です。天然資源は使えばなくなりますが、この目に見えない「資源」は、使えば使うほど、磨けば磨くほど、強くたくましく立派になります。
歩かなければ足腰は弱くなるし、堅いものを食べなければあごは弱くなります。けれども、足腰もあごも、そして知性も鍛えれば強くなります。

齋藤孝さんの提唱、一朝一夕には実現できるものではありません。知性に対するあこがれという心の問題から始まり、読書の習慣化、そして思考することや発言・表現まで昇華させないといけません。

これを考えると、大人こそがしっかりすることから始めないといけないと感じます。まずはリスペクトされる大人になること。これが第1の課題であると思うのです。

それを考えると、この本、若者に向けて書いてあると同時に、大人に対する応援歌にも聞こえてきます。もしくは「大人よ、しっかりしろ」という叱責にも聞こえます。

あとがきにあったある1文に心が留まりました。内容がわかるように後の文も引用します。

心だけポジティブになるというやり方では、現実を目の前にしたときに、脆い。技があってはじめて、本当の自信が持てる。

「現実を目の前にしたときに」と「脆い」の間のテン。このテンがなくたって何の不自然さも感じません。逆にテンがあることで間が生まれています。この一呼吸に齋藤孝さんの強い想いを感じます。

巷には「ポジティブ」を勧める本があふれています。前向きでありさえすれば世の中は渡っていける、そんな風潮です。もしくは、手軽なノウハウ本、「楽して○○できる」ことを賞賛する本もあふれています。思考の放棄、お手軽なのが一番、そんな方向への大きな流れができてしまっています。
そんな流れに対して、はっきりと「No」とつきつけ、そして自分自身がしっかりするしかないというメッセージが色濃く出ています。「テン」の一呼吸からそんなことを想像してしまいました。

13ページにわたる長い長い、そして想いと気合いの込められたあとがきの最後に「若い人たちへのメッセージ」とあります。部分引用といえない分量ですが、ぜひ記録しておきたい! 問題がありそうですが、引用してしまいます。このメッセージに心引かれたら、ぜひこの書籍を手にとって欲しいと想います。

 学ぶエネルギーが発散されている人・場所に集いたまえ。
 友に対しては、上に向かって飛ぶ、「向上心の矢」として接したまえ。
 学び合い、新たな「気づき」が生まれる瞬間こそ、人生の祝祭と感じ、拍手と歓声で、その「祭り」を祝いたまえ。
 自分を支えてくれる「技」を磨き、その技で他の人を幸福にすることを生きがいとしてくれたまえ。
 「わからなさ」に出会った時、「関係ない」と切り捨てずに、踏みとどまって理解しようとしてほしい。
 自分の価値にゆらぎを与えてくれる「自分とは異質の他者性の高いもの」こそ、自分を高めてくれるものとして大事にしてほしい。
 日本の先人たちがどれほど学ぶことに燃え、それを楽しみとして生きたか。それを誇りにしてほしい。
 そして、つらい時、くじけそうな時は、「雨ニモマケズ」を全文つぶやき、宮沢賢治マインドを心の灯としてともしてほしい。

久しぶりに齋藤孝さんの著書を読みました。一時期、自分の中で「齋藤孝さんブーム」が起きていて、齋藤孝さんの本を追いかけていたものでした。シリーズというわけではありませんが、『○○力』なんていう本もよく読みました。

齋藤孝さんの著書を読んでいると、下積み時代(報われなかった時代というのかもしれませんが)に培った地力が他の人と違うように思います。
本の点数が増えてくると、どうしても「どこかで読んだ感じ」が拭えません。
けれども、齋藤孝さんの場合はいまだに新鮮な素材、目新しい切り口を提供し続けています。
これって、ちょっとやそっとじゃ真似できるものではありません。

読みはじめの時は存在すら意識していなかったのですが、読み始めたら無性に「3色ボールペン」が欲しくなりました。赤・青・緑に色分けしたい衝動にかられたのです。書いているご本人も書きながら意識しているのだろうなと、思わずうなってしまいました。

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2009年3月12日木曜日

朝日選書『中学生からの作文技術』

著者:本多勝一
発行:朝日新聞社

武田徹さんの『調べる!、伝える!、魅せる! 新世代ルポルタージュ指南』がきっかけで本多勝一さんの著書に興味を持ちました。様々なところで引用されている『日本語の作文技術』を読みたかったのですが、近所の図書館になく、こちらの『中学生からの作文技術』を手に取りました。

『調べる!、伝える!、魅せる! 新世代ルポルタージュ指南』でも指摘されていたとおり、「修飾語の順序」と「テン・マルの打ち方」のルールが明快で参考になりました。

細かいルールがいくつかあるのですが、そのエッセンスだけ無理矢理抜き出せば、次のようになります。

修飾語は長い順に並べ、このルールに反するときにテンを打つ。

これにつきます。

修飾語については感覚で並べていたので、こういう指針があると迷ったときに助かります。また、個人的に決めているテンのルールは、接続語の後のテン、重文になるときの間の点、長い主語の後のテンなど、いくつか決めて打つようにしています。

「第七章 無神経な文章」「第八章 リズムと文体」の域にはまだまだ到達できそうもありません。名文と呼ばれる文章をもっともっと呼んで、自分に取り込んでいくのが先決だろうと思います。その上で自分で表現することにチャレンジしていきたいです。

目標ができ、たくさんのいい刺激を受けることができました。文章術関連の本をいろいろと探してみようと思います。

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光文社新書『漢字三昧』

著者:阿辻哲次 ※辻のしんにょうの点は2つ
発行:光文社

『部首のはなし』『部首のはなし2』に続き、阿辻さんの著書を読みました。
中国・日本の漢字の歴史を幅広く取り上げ、漢字の魅力を伝えています。

一番インパクトがあったのは、p.80~81にあった中国で使われているという元素の周期表。各元素が漢字1字で表されているのです。

この周期表をみるほとんど形成文字で漢字が作られているのがわかります。
(形成文字とは、意味を表す部首に音を表す部分を組み合わせてできた漢字です。)

気体を表す漢字には「気」の「メ」の部分に様々なパーツがかかれています。
例えば、フッ素であれば「気ーメ+弗」、クリプトンであれば「気-メ+克」。雰囲気をよく伝えています。

液体を表す漢字には「さんずい」が使われています。
臭素であれば「さんずい+臭」。実にそのままでわかりやすいです。

固体は金属元素と非金属元素で部首が異なります。金属元素には「金へん」(ただし、中国で使われる異体字になっています)が、非金属元素には「石へん」がそれぞれ使われています。
金属元素のナトリウムは「金+内」、マンガンは「金+孟」。非金属元素で、炭素はそのまま「石+炭」、テルルは「石+帝」。

日本語での発音でも理解しやすいものを例として取り上げましたが、中国語を知っている人はもっと楽しめるのでしょうね。

なお、金属であるにも関わらず常温で液体である水銀。「金へん」なのか「さんずい」なのか。どちらでもなく、「エ」の下に「水」を重ねた漢字で表されています。「エ」の部分に金属を表す意味があるのでしょうか。想像してみると楽しいです。

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2009年3月9日月曜日

光文社新書『非属の才能』

著者:山田玲司
発行:光文社

漫画家の山田玲司さんによる初の新書です。

この本を読むに至ったきっかけは、マンガ喫茶で見つけた『絶望に効く薬』という漫画です。『絶望に効く薬』とは、筆者の山田さんが各界で活躍している人へ希望を求めてインタビューをし、それを漫画に起こしたものです。

この漫画が連載されている『週刊ヤングサンデー』は普段読むことがないので、コミックスを見るまで存在を知りませんでした。ひとたび読んで面白さに気づき、その後既刊の14巻まで一気に読み切ってしまいました。

新書『非属の才能』は、そんなインタビューしている中からヒントを得て書き上げたとのことです。

この『非属の才能』を読んでいて、著者山田さんに関する疑問がようやく解けました。その疑問とは「山田玲司さんはどうしてこんなにも自信にみなぎっているのか」ということです。
周囲からは漫画家をやめるよう否定されてきた山田さん。ただ1人、母方のおばあさんの「みんなはいろいろ言うと思うけど、おばあちゃんは玲ちゃんは漫画家になれると思うよ」という発言が、山田さんの自信になったと述懐しています。
別のページでは子ども時代、お父さんから未完成な人間ではなく、1人の独立した人間として見てもらえたことも書いています。

漫画の中での発言、込められたメッセージ、刺激的で敵を作りかねないものを多く含みます。誤解されて当然の描き方も目に付きます。風当たりも強いだろうと思います。
けれども、幼少期のこういった経験が風当たりにも負けないタフな原動力になっているのだと、非常に納得しました。「無条件の自信」なんだろうと思います。

本書を通して伝えたいメッセージには満足いきました。
数多くの人の影響を受けながらも、それをオリジナルの言葉で一生懸命伝えようとする姿勢に心惹かれます。どこかから引用して切って貼りつけただけの巷にあふれる人生訓なんかより、はるかに力があります。

感心したことの1つに、「読書に対するスタンス」があります。
山田さんは明快に100冊の本を読むよう勧めています。手当たり次第100冊も読めば、人生に影響を与えるバイブルのような本に出会えると断言します。そして気持ちよくこう続けます。

「本なんて読んでなんの意味があるの?」などという人間は、まず間違いなく、続けて一〇〇冊もの本を読んだことのない人間なので、相手にしなくていいだろう。

切れ味鋭く切り込んでいて、ほれぼれする文です。

その後に読者に対し注意を呼びかけていて、この注意が本質的で、非常に気に入っています。その注意とは「文豪の作品を避けない」ことと「解説を読んで作者や時代背景をつかむ」ことを勧めています。「読みなさい」と強く主張するのではなく、「しない方がいい、した方がいい」とソフトに提案しつつも、しっかりとそのメリットを伝えようとしています。
僕自身、文豪の作品への接点がまだまだ少なく、もっと積極的になりたいと思わせてくれました。

全体として伝えたいメッセージに耳を傾ければ、発見がたくさんあります。
細かいところ、些末なところ、論理的な飛躍など目をつくところも多いのですが、そこには目をつむる方が、全体を損なわず読めます。数学で言うところの「逆」「裏」をとって誤解しそうになる表現にも気をつけなければなりません。
それを乗り越えてでも読む価値がある1冊でした。

漫画家デビュー20年を越えて、ますますノリに乗っている山田玲司さん。末永くがんばっていただきたいと思います。

(追伸)
山田玲司さんの文章を読んでいて、形式段落の短さが気になりました。1文1段落になっているところがとにかく多いのです。細かく話題が変わっていきながら、全体で大きな意味を持ち、結論に向かっていく独特の文体。
なんとなく漫画のコマ割を連想しました。1段落が1コマ。いくつかの形式段落から意味段落ができますが、コマを集めてページを構成するのと同じです。
この山田さんの文体、漫画家が書くからこその文体なのでしょうか。いわば「職業病」的なものだととらえていいのでしょうか。他の漫画家の文章にも注目したいと思います。

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中公新書ラクレ『調べる!、伝える!、魅せる! 新世代ルポルタージュ指南』

著者:武田徹
発行:中央公論新社

「ルポルタージュが書ければ、何だって書ける!」--この大看板の元に、ルポの書き方を多角的に解説した本です。

元々、著者の武田さんがこの本を書くことになったきっかけは、「メディア教育」「メディア研究」に安易に流れる大学への「怒り」や「憤慨」だったとのことです。
けれども、僕はそんな思惑とは関係なく、「表現」への新しいアプローチを教えられた気がしています。

世に出回っている「文章術の解説」「表現法のテキスト」は、どうしても行儀がよすぎて、なんとも居心地の悪さを感じていたものでした。なんか肌に合わなかったのです。 しかし、この『調べる!、伝える、見せる !』はそんな行儀がいい本とは違い、今までの成果を引用しつつも、独自のまとめ方で「表現」の方法をまとめています。

偶然に図書館でこの本を見つけたのですが、手にとって良かったです。思わぬ収穫がありました。 この本で紹介されていた別の本にも興味引かれるものがあったので、そちらも探してみるつもりです。読んだらここにアップします。

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2009年3月6日金曜日

中公新書『部首のはなし2』

著者:阿辻哲次 ※辻のしんにょうの点は2つ
発行:中央公論新社

以前読んだ『部首のはなし』の第2弾にあたる本です。
中国文化史を専門とする阿辻さんが、部首が持つ意味と、その部首から構成される漢字を紹介。
その紹介は、決して百科事典のように総覧的になっているわけではありません。時に中国の古典から引用し高尚な解説が繰り広げられます。時に自分の体験談から親しみやすいエッセイのような解説が展開されます。時に笑いを含み、時に蘊蓄を含み、時に考えさせられる。そんな1冊です。

『部首のはなし』『部首のはなし2』と2冊続けて読んで、漢字に対する考え方・見方が深まったのを感じます。
「バラしてみる」「消えた部分を補う」「旧字体を考える」……、こんなことが漢字の本来の姿をつかまえコツなのでしょうか。漢字の意味に違和感を感じたら、何かあるはずだと身構える姿勢は少なくともつけることができました。

『部首のはなし』シリーズは終わったわけですが、この阿辻さんの著書はまだまだ存在するようです。探して読んでみようと考えています。まずは図書館で探さないといけないですね。


○本の記録以外のことを書いている自分のブログに、この本で学んだことを書いています。よかったらどうぞ。
 http://tblb.blog.shinobi.jp/Entry/29/

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2009年3月3日火曜日

『大日本字』

著者:大日本タイポ組合
発行:誠文堂新光社

ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット、数字、……。あらゆる文字と共に遊び、文字をデザインしている「大日本タイポ組合」という2人組(塚田哲也さんと秀親さん)による作品集です。

この作品の面白さは、具体的な作品を見ないことには伝わりません。公式サイトにもいろいろ載っているのですが、下のサイトに塚田哲也さんと秀親さんへの2人へのインタビューがあり、代表的な作品も紹介されていて雰囲気がよく伝わってきます。

○PingMag「文字の達人、大日本タイポ組合」
 http://pingmag.jp/J/2007/04/20/dainippon-type-organization/

この大日本タイポ組合を知ったのは、パズル雑誌『パズル通信ニコリ』125号がきっかけ。

こうして本で出来上がった作品を見ていると、ただただ圧倒されます。100ページ以上にわたって作品が惜しげもなく公開されています。

完成された作品だけ見てしまうと、アイデアが浮かぶまでの苦労や思いついたときの瞬間、そのときの感動などが忘れられてしまいます。この本ではその苦労や瞬間を一生懸命伝えたい意欲があふれています。僕らは解説を読むことで、その苦労・瞬間を追体験することができます。

言葉遊び、文字遊びなどを楽しめる人ならば、新しい境地へといざなってくれる1冊です。


○大日本タイポ組合 公式ウエブページ
 http://dainippon.type.org/

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