著者:P.F.ドラッカー
編訳者:上田惇生
発行:ダイヤモンド社
知識労働者が組織の中で「いかにして社会に貢献するか」を論じた本です。
企業の至上命題は利潤の追求です。利潤があってはじめて、企業の現状維持が可能となります。企業にとって利潤は必要条件です。
だからこそ、利潤だけでは不十分です。企業は社会に対し貢献する義務を負っています。奉仕する義務といっても構いません。労働者に給与・生活を保障し、市場に商品・サービスを提供します。人々に変化・成長を促し、新しい価値を創出します。これが「社会への貢献」であり、「社会への奉仕」です。
企業、特に先進国内における企業では、労働者の多くが知識労働者として働いています。ここでいう知識労働者とは、それぞれが専門知識を持っていて、その知識を生かすことで労働に従事する者を指します。
知識労働者が持つ専門知識。単独ではうまく働きません。他の専門知識と結合・融合させることで、はじめて「社会への貢献」につながります。
すなわち、知識労働者は単独ではなく、複数人で仕事をすることになります。言い換えれば、知識労働者が社会に貢献するには、組織が必要である、ということです。
この『プロフェッショナルの条件』でドラッカーが述べていることを乱暴にまとめたならば、以下の2点です。
★知識労働者はどうあるべきか
★組織はどうあるべきか
知識労働者としてのあり方。
例えば、「強みを知ること」の重要性を訴えています。組織の中で専門知識を活かすのが知識労働者の務めであるのだから、1人1人が強みを知らなくてはならないといいます。そして、その強みは、すでに成し遂げた貢献から見つけ出せると教えてくれます。
知識労働者は「時間を管理する」ことが必要であると訴えています。専門知識を活かすには、時に細切れの時間では意味をなしません。まとまった時間が必要です。知識労働者は自分の時間を管理することが必須である、とドラッカーは語ります。
組織としてのあり方。
組織は社会に貢献するために「意志決定」が必要です。そんな意志決定の秘訣も余すことなくドラッカーはまとめています。優れた意志決定には、正しい方法、および悪い方法があって、そこに注意するだけでも、間違った意志決定の可能性がグンと減ります。
そして、意志決定を実行し、成果につなげるための注意もなされます。コミュニケーションのあり方、情報の扱い方、リーダーシップの発揮の仕方、人の強みの活かし方。すべてが組織の中で成果をあげるために、あらゆる知識労働者が知っておくべきことです。
イノベーション(新規導入・革新・刷新)のあり方にも筆は及んでいます。天才ではなく普通の人がイノベーションを成功させるためのコツもまとまっているのです。
僕がドラッカー本を読んだのは、これで2冊目です。
1冊目は『ドラッカー入門』。ドラッカー本の翻訳のほとんどを手がけてきた上田惇生さんによる入門解説書です。広大なドラッカー世界の全体像をつかむ、まるで世界地図のような1冊でした。
『ドラッカー入門』を読み、知識労働者個人として、いかにあるべきかに興味を抱きました。そこで選んだのが、この『プロフェッショナルの条件』です。
タイトルに「はじめて読む」と冠している通り、導入にふさわしいものでした。しかし、決して簡単というわけではなく、充分すぎるほど本格的なものでした。
巷にあふれるビジネス書とは一線を画しています。というかレベルが違います。ビジネス書におけるノウハウにぬくぬくとつかるのもいいのですが、ぬくぬくでは得られない世界がここには広がっています。
ぬくぬくを卒業して、厳しくも新しい世界に飛び出すのならば、ぜひ、ドラッカーをお勧めします。そして、知識労働者としていかにあるべきかを追求したいのであれば、この『プロフェッショナルの条件』は間違いなくオススメです。いつでも読み返したい1冊です。
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