著者:矢島裕紀彦
発行:日本放送出版協会
先日読んだ『よりぬき読書相談室 どすこい幕の内編』で紹介されているのを読み、この本の存在を知りました。
国語や歴史の授業で登場する文豪たちとスポーツの関係が記されています。タイトルにもあるように、『坊っちゃん』『吾輩は猫である』の夏目漱石は学生時代、器械体操が得意だったというのです。『堕落論』の坂口安吾はハイジャンプ競技でインターミドル全国大会を優勝しているというのです。そんな意外なエピソードが25編収められています。
その筋の人にはおなじみなのかもしれませんが、個人的には「三島由紀夫とボディビル」のエピソードにグッときました。
文豪と呼ばれる作家たちとスポーツの関係の意外性が面白いのです。あんな重苦しい小説を書いているのに、オフでは体を動かしていた。そのギャップがたまらないのです。今も昔も生活にメリハリを持ち、バランスよく暮らさなければならないのには変わらない。そんな当たり前のことに気づかされます。
この本を読むと、文豪たちに対する意識が変わります。どこからか親近感が沸きます。国語(特に文学史)が嫌いな生徒に読ませると興味を抱くかもしれません。その子が体育会系ならなおさら効果を発揮する可能性があります。国語の先生にとっても授業中に話すネタにもなります。
各作家の解説が丁寧に書かれているのもポイントが高いです。資料集などに掲載されているような下手な解説なんかより、この本の方がよっぽどわかりやすくまとめられています。
作家たちがスポーツに励む姿が想像できるのも、筆者・矢島裕紀彦さんの筆の力なのでしょう。素朴だけどもいい本です。すべての人が興味を持つとは限らないけれども、誰が呼んでも楽しめる懐の深さがあります。興味を持った人はぜひ手にとって欲しい1冊です。
○Web本の雑誌より読書相談室 「いろいろな作家の面白いエピソード」
本に掲載されていた質問へのリンクです。質問2006/03/05~回答2006/03/18のところにあります。ページ後半の方にあります。
http://www.webdoku.jp/soudan/answer/view_date.php?date=2006/03/18
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